獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

去りゆく季節に

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 急速に秋が深まっている。細長い日本列島だから、北の地方からは雪の便りが聞かれ始めた。狭い東京地方も場所によっては銀杏が黄色く色づいている。桜や欅などの広葉樹種は、赤や茶色に変わった落ち葉が風に舞っている。他のシーズンとは趣が違う"枯葉"の季節である。不思議にご無沙汰しているシャンソンや、ボードレーヌの詩が甦る。

 スマホや携帯がなかった時代は人それぞれに情緒があって、若い人ばかりでなく中高年者も忘れていた歌などを思い起こしたものである。シャンソンには失恋の歌が多いが、熱い恋の季節が終わって、去りゆく人へのやるせない慕情が胸に迫る。風に舞いながら遠のいていく枯葉に、消え難い想いを重ね合わせた。

 緑一色だった野山が彩り豊かに化粧しても、それはすぐに終わって消え去る季節の哀感だと誰もが知っている。悲しく哀れなひとときの輝きだからこそ、一際美しく人々を魅了した。様々な想いが重なって更に彩りを増すのである。忘れ難い記憶となってそれぞれの人の心に残るのだ。

 この季節は詩人ならずとも一片の詩を書きたくなる。老いも若きも等しく詩人になる季節だ。去年とは何かが変わった人も、何も変わらない人も、命を見つめれば心揺らす思いに気づくだろう。川の流れも海でさえも、水は一つところに留まらない。吹き抜ける風も元へは戻らない。変わりゆくのは木々や花ばかりではないのである。

 人の心に複雑な影を残して、それぞれのものが通り過ぎてゆく。去りゆく人、訪れる人、それぞれがそれぞれである。季節の色や風の匂いが感じられたら、紛れもなく生きているのだ。例え一人になっても、二人や三人になっても、季節は変わらず静かな感傷を残して去って行く。

 私の心に何が残っただろう。そして貴方の心には何が残りましたか ? 間もなく晩秋から冬へと季節は変わる。イブ・モンタンの囁くような歌声が聞こえていますか ?