獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

驚きの安倍辞任

 世の中には予期せぬことが沢山あるが、昨日突然の安倍総理の辞任表明には驚かされた。「安倍政権7年8ヶ月」を書いたばかりの矢先のことに、間が抜けたバツの悪さを感じながら現実となった我が国の政局を考えねばならなくなった。"政治の世界は一寸先が闇"とは随分言い古された表現だが、改めて語感の凄さを実感した。

 安倍晋三現総理は登場時もそうであったが、何やら他人を驚かせる"ご趣味"をお持ちらしい。誰もが予想しない形で登場して、形振り構わず与党自民党の総理・総裁候補になるお得意の政治手法で前人未踏の長期政権を築いた。その唯我独尊的政治手法は幼稚性としたたかさという相反する要素を併せ持って、政策面で前民主党政権をも飲み込んだ。

 月並みな言葉で批判しても安倍政権の全貌を捉えることは出来ないだろう。ゴーイングマイウェイの強引さばかりではない、言うなれば変幻自在の硬軟両面を持ち合わせて、さすがに「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介元総理の孫だと世間を納得させた。ノーベル平和賞を受賞して戦後最長の長期政権を誇った佐藤栄作元総理を大伯父に持つ抜群の毛並みの良さは、並み居る与党内のライバルの存在感を消し去って余りあった。

 父晋太郎元外相の悲願であった地球儀外交を異例の長期安定政権で実現して、岸元総理が自民党結党時に掲げた「憲法改正」へ向けて一直線だと誰もが予想していた。目前に迫ったとも言える「憲法改正」を前にして、この段階での総理降板はさぞや無念であろうと拝察する。そうは言っても盤石な「院政」を敷くことで悲願実現への道は残されている。

 幸か不幸か安倍長期政権によって与党自民党政策集団の歴史と決別した。保身のための保身術集団化して、大ボス不在になっている。利権に目鼻の効く小賢しいドングリ議員ばかりになっている。誰が安倍総理の後継者になっても、その実力は知れている。その意味で文字通りの「ドングリの背比べ」の様相を呈している。視点を拡大して見渡してみても、我が国政界は与野党共々大同小異である。

 急を告げる政局で安倍総理の後継に名乗りを上げるであろう面々は大方予測できる。しかし悪いが、言わせて貰うなら万分の一の期待感も持てない。言うなれば大人の後に幼稚園児が登場するようなもので、どうお世辞の道具立てをしても期待という文字に反するばかりである。個々の名前を列挙するのは遠慮するが、正直言うとそれらの面々の名前を書く気力さえないのである。

 与党がガタガタだと思える以上に、我が国の野党は言うなれば国会に巣くうゴキブリだ。こんな体たらく議員を議員と呼ぶことさえ抵抗感を感じざるを得ないが、若し間違えてでもこれらの野党へ政権委譲するなら、むしろ裁判員裁判制度を見習って無作為に抽選で国民から内閣総理大臣を選出すればいいと私は思っている。利権集団化している現下の国会を本来の民主的制度に戻す手段は有効策が乏しいので、検討には値するだろう。

 安倍政権の終幕は誰も予想しない形で終わろうとしている。今更その是非を論じても何ほどの効果が得られようか。善し悪しは兎も角として終わるものは終わるのである。この国の近未来は明るい材料に包まれているわけではない。国民の多くが抱く茫漠とした不安は、いつの日か現実として私たちの目の前に提示されるだろう。脅威はコロナウイルスだけではないのである。