獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

高齢者のための「尿漏れ」の話

 世に高齢者が溢れる時代である。かく申す私自身が高齢者なので、ことの大小を問わず高齢者問題に無関心では居られない。どれもが自身のことであるからだ。特に長く病院のお世話になっている身としては、自身のことに加えて否応なく色々な患者さん達に接しているので、余計他人事ではない思いが強いのである。

 人間は例え健康であろうとなかろうと、加齢による心身の変化を押しとどめることは出来ない。テレビCMや雑誌の記事などで、屡々高齢になっても若々しい生活を送っているという御仁にお目に掛かる。多少の個人差は認めるにしても、どう見ても"年齢不相応"としか思えない「眉唾もの」だが、それを鵜呑みにして信じる人達が居るから文字通り"信じられない"のである。

 加齢による衰えを最も実感するのが肉体的変化だろう。年代によってかなり程度の差が大きいので一概には言えないにしても、誰でもが間違いなく体験せざるを得ない。自立して歩くという人間としての基本活動すら覚束なくなるので、いざそれを実感した時には目頭が熱くなる。繊細な感性の持ち主なら思わず涙が落ちるだろう。

 次いで訪れるのが排尿・排便に関わる変化である。ごく当たり前に出来ていたことが、ある日突然出来なくなるショックは決して小さなものではない。まず最初に現れるのが排尿の回数が増える「頻尿」だ。最初の段階はトイレへ行く回数が少し多くなる程度だが、徐々に進行してくると夜間熟睡が困難になる。

 高齢化社会を反映して便利なサポート用品が数多く市販されている。「頻尿」で深刻なのは次第に尿意を抑制できなくなることで、トイレへ辿り着く前に尿が出てしまう「尿漏れ」が起きる。これも初期段階はごく少量だが、症状が進行するのに連れて量が増える。下着に貼り付けて使用する交換パットが多数市販されているので、実際に漏れる尿の量に合わせて選べば善い。

 私自身"尿漏れパット"愛用者の一人だが、昼夜で漏れる量が異なるので慣れるのに時間を必要とした。10ccの軽度用から200ccの重度用まで各種購入したが、量が増えるに連れて横漏れという新たな問題が出てきた。特に夜間に多いので、下着ばかりか時には布団を濡らす事態にもなった。

 肺癌と膵臓癌に加えて気胸での入院も体験しているので、その間の入院生活では長く「尿道カテーテル」のお世話になった。尿道へパイプを通して排尿する便利な処置だが、膀胱の活動を無理に止めるので、長く使用すると深刻な尿漏れにつながる。私の場合が好例で、退院時から頻発する尿漏れと付き合わされた。

 病的要因に加えて加齢による身体機能の低下が重なり、通常の場合とは比較にならない深刻な症状に悩まされた。2年程度下着に貼り付ける"尿漏れパット"を愛用したが、症状が重症化して尿意を止められない"暴走特急"の如くになり、最近になって介護用紙パンツのお世話になっている。現在は夜間のみだが、介護用紙パンツに尿パットを貼り付けて使用している。かなりの量まで対応するので、一応安心して生活出来ている。

 紙パンツ・尿パットともに多数の商品が市販されているが、ほぼ同一ながらメーカーによって微妙な機能や実際の使い心地が違うので、自分に合う商品を決めるまで多少の紆余曲折が必要のようだ。私の場合は痩せているため貼り付ける尿パットのズレが気になったので、粘着テープが2カ所にあるタイプにした。通常は殆どの商品が1カ所のみだ。

 それぞれの商品ごとにかなり価格差があるので、値段か安いからと飛びつくと後で後悔する羽目になり兼ねない。最終的には実際に装着してみないと分からないので、少量パッケージの商品を何点か購入して試されることをお勧めする。高齢者世帯は何事も大変であるが、同世代の家内にも「頻尿」傾向が出始めて、トイレの奪い合いが起きている。

 健康な若い時分には意識することがなかった生理現象も、年老いると日を増すごとに笑えない現象が多発する。我が家は家内とトイレが重なる場合が多いので、慌てないように溲瓶(しびん)を複数用意している。コロナ・ウイルスの外出自粛で外へ出る機会が減ったが、複数の病院への通院があるので最低限度の外出はせねばならない。

 従来から使用していた「尿漏れパット」に加えて、収容量が多い紙パンツ用の「尿パット」を直接下着に貼り付けてみたりと、試行錯誤しながら工夫している。避け難い尿漏れ状態をどう少しでも快適に過ごすか。快適と不快の感じ方は個人差があるので、それぞれが自分で納得できる方法を見つける以外手がない。

 「老い」は誰しもにやってくる。世間では善く幸せな老後と言われる。果たして本当に幸せな老後などあり得るのだろうかと、少なからず首を傾げながら自分と向き合い、毎日の生活と向き合っている。明日天気になーれ…と願いながら。