獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

セピア色の情景

 それはとある年の10月の出来事だった。北国津軽は季節の進行が早いが、その年は珍しく比較的温暖な日が続いてその日も暖かかった。紅葉の時期は既に過ぎて、街路樹は葉を落として遠くに見える山肌も色が変わっていた。街をゆく人の服装はすっかり秋めいて、間もなく訪れる雪降る季節を予感させていた。

 日曜日の昼を過ぎた頃にA子はやって来た。近いとは言い難い距離を自転車でやって来た。少し派手目の薄いプリーツスカートにセーター姿で、その上に薄手の赤いカーディガンを羽織っていた。暖かいとは言っても北国津軽の10月には珍しい格好で、彼女は私の前に現れた。後で気づいたのだが、スカートの下に防寒衣類は身につけていなかった。

 学生相手の安普請な木造2階建てアパートの私の部屋は、1階の西日が入る位置にあった。午後になると西向きの窓から日差しが入って、閉め切った部屋の中は時に汗ばむほど暑くなることもあった。A子が来た日もそんな日で、キッチンやトイレが共同の風呂なし6畳間で二人になると、窓際に膝を崩して座るA子に正面から西日が当たった。

 国立大生の私とミッション系短大生のA子との会話は取り留めのないもので、お互いの学生生活や最近見た映画や聴いた音楽などでそれなりに盛り上がった。窓を開けると道路から部屋の中が丸見えになるので、客であるA子に失礼にならぬよう暑いのを我慢して窓を閉め切っていた。その精もあって若い二人は妙に喉の渇きを覚えていた。

 豊かとは言えない学生下宿なので瓶入りのインスタントコーヒーしかなく、2杯目を口にした後でA子は「暑い」と言って上に羽織っていた赤いカーディガンを脱いだ。西日か当たっているセーター姿のA子の、胸の隆起が目立った。畳の上で崩している脚がスカートの下から覗いて、柔らかそうな白い太腿が肉感的に見えた。

 私の視線が太腿に注がれているのに気づいたA子は、慌ててスカートの裾を引っ張って隠そうとするのだが、動く度に膝の奥が薄いプリーツスカートから透けて見えた。私も慌てて目を逸らすのだが、それが逆にA子の若い性感を刺激したのか、何度か同じ動作を繰り返す内にお互いに興奮しているのを意識した。

 会話が途切れて静かな室内にお互いの鼓動が響き合うように感じられた。私とA子とは2週間ほど前に彼女の友人を介して偶然出会った。二人きりで会う機会は多くはなく、それまでA子の体に触れたことはなかった。一際目を惹く色白美人で、少し肉感的体型の持ち主だったので付き合っている男が居ないわけはなく、特別な関係になるなど考えられない相手だった。

 大きなキラキラした瞳で見つめられると、思わずドキドキして体が熱くなる感じがする女性であった。この日はA子の希望で部屋を見たいと言っての訪問だった。知り合って間もない若い男の部屋へ、無防備とも思える服装で現れたA子。お互いに心臓の動きが速くなり、体温が上昇しているであろうことはお互いが意識していた。

 伏し目がちだったA子の視線が突然私に注がれ、私を見つめる瞳が何故か艶を帯びているように感じられた。窮屈そうに横座りしていた脚が更に崩れて、心持ち開いた膝の奥に柔らかそうな太腿とパンツだけの下着がチラッと見えた。私はもう興奮状態で発する言葉もなく、A子に近づき肩を抱いた。

 初めてなので拒まれる懸念はあったが、私は無我夢中で薄手のセーターの上からA子の胸に触れた。不思議に度胸が据わっていて、初めての戸惑いはなかった。柔らかく豊かなA子の胸は私を更に興奮させた。ゆっくり揉むように両胸を弄ぶと、「ハァー」とA子が熱い息を吐いた。もどかしくなってセーターの下へ手を入れるとブラだけだった。

 ブラのホックを外そうとすると、A子は熱い息を吐きながら自分で腕を後ろへ廻して外した。セーターの下から露出したA子の胸へ、私は興奮して夢中で吸い付いた。膨らんで大きくなった乳首を嘗め回すと、A子は切なそうに首を振った。時折ピクッと体が動いてA子は放心したようになった。

 崩れて開いた両脚の奥へ触れようとすると、始めてA子は自分の秘部を手で覆うようにして首を横に振った。「私初めてではないの。それでもいい?」と小さな声で問いかけてきた。私は無言で頷きA子のスカートを脱がそうとした。「自分でする」とA子は言って、起ち上がって自分でスカートを脱いだ。私がパンツを脱がそうとしても抵抗しなかった。

 A子の秘部は濡れそぼっていた。私がしつこく胸を揉み、乳首を嘗め回したことで興奮状態が昂まり、両脚の奥は愛液があふれ出していた。「濡れていて恥ずかしい」と言いながら、私が手を入れるとA子は脚を開いた。熱く潤っていたA子の秘部は、私が少し手を動かす都度腰が動いて反応した。観念したかのようなA子は、私が想像する以上に敏感で、2、3回程度の性体験ではないのが判った。

 私もA子が初めてではなく、中学生の時に2歳年上の女性先輩と経験してから幾人かの女性たちと交わった。それらの中でA子のように激しく濡れる女性はいなかった。18歳の短大生とは思えないA子の反応に、私は少し驚いたが躊躇せずセックスした。A子は時々大きな声を出して体を痙攣させた。

 着ていたセーターも自分で脱いだA子は、上気して少し赤みを増した裸身を私に預けて大人の女に変身していた。一度頂点に達して体を離そうとした私に、A子は「そのままで」と言って体を密着させた。若い二人だけにすぐに性感が甦って、私とA子は更に性の蜃気楼に酔いしれた。

 「私を嫌いになった?」と、終わった後で衣服を整えながらA子は私に聞いた。私は首を横に振って否定し、「また会おう」と伝えた。嬉しそうに満面笑顔のA子は、翌日からほぼ毎日のように私のアパートへ現れ、不在の時は玄関横で私の帰りを待つようになった。若い二人は会うごとに激しく求め合い、時には寒い夜の屋外でも人目を忍んで交わった。

 私とA子が出会ってから1月が経った頃に、突然A子は私の前から消えた。毎日のように来るのが日常化し始めていたので戸惑ったが、4、5日してA子と出会うきっかけになった彼女の友人から連絡があった。以前から交際していた相手がいて、その相手と結婚したとのことだった。

 キツネにつまされたような話ですぐには意味が呑み込めなかったが、どうやらA子の交際相手の男性が海外出張で不在だったらしい。若い女性のひとときのアバンチュールであったのか、単なる浮気心であったのかは不明である。私の腕の中で激しく燃え上がったA子は、夢であったのか、幻であったのかは、幾久しい今も判らず仕舞いである。

 比較的温暖だったその年の秋だったが、それから程なくして北国津軽は早い初雪になった。私の心には熱い女の体温と、身を切るような冷たい木枯らしとがせめぎ合い、切なくやるせない冬を迎えた。「女は魔物」と古人は言うが、今なお私の前を去就する女性たちはやはり魔物である。