獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

中華帝国への野望

 新年早々の世界は少々きな臭い話題で賑々しい。アメリカがイランの司令官を殺して、イランがその報復に出て中東戦争の開始かと思われたが、マスコミが騒ぐのとは裏腹に何事も起こらなかった。情報に振り回されてバタバタした向きにはお気の毒であるが、アメリカやイランの指導者にその覚悟や度胸があるとは到底思えない。

 我が国のみならず今や世界の指導者と言われる人物の「小型化」が著しい。アメリカのオバマ前大統領を最後に、世界の檜舞台は主役を失った。ドイツの女性指導者が孤軍奮闘している観があるが、トランプだか花札だか知らない"訳が分からぬ"人物がアメリカ大統領になって、世界は混迷の時代へ突入したようだ。

 金科玉条の如く持て囃されてきた「民主主義」の雲行きが怪しくなって基軸が激しく揺らぐ中で、マルクスレーニン共産主義とは凡そかけ離れた"ご都合主義"の「共産主義」が不気味に幅をきかせている。主義・主張は何とやらで、日米をはじめとする自由主義陣営を巧みに取り込んで急成長した隣国中国の存在感が、今や世界を席巻する勢いである。

 一党独裁政権の舵取りは旧王朝時代を凌いで、「向かうところ敵なし」の観が顕著である。風化しつつある"天安門事件"の悪夢は、本当は悪夢ではなく"正夢"であったことを歴史が証明している。自国民であろうが、外国人であろうが、構うことなく検挙して重罪に伏す"恐怖政治"が、誰憚ることなく大手を振ってまかり通っている。

 朝鮮半島の半分を占める「北朝鮮」もほぼ同様で、中国の毛沢東を真似た金日成の子や孫が世襲で"帝王"以上の権力を独占して君臨している。文字通りの"暗黒政治"だが、「物言えば唇寒し」どころではない「物言えば殺される」強権を見せつけて憚らない。一党独裁共産主義政権は立法・司法・行政のすべての権限を有するゆえに、党の決定は最高裁判決さえ覆す。

 「天上天下唯我独尊」は有名な釈迦の言葉だが、言葉の意味は全く違っても共産主義政権の現状はこの言葉通りである。階級差別をなくそうと謳ったマルクスレーニンの理想とは似ても似つかぬ様変わりで、党幹部が私腹を肥やしてやりたい放題に出来る極めて便利な主義・主張になった。封建君主でさえここまではやらなかったことが、党幹部の思惑通りに日常化している。

 その中国が14億の人口を抱えて世界中にチャイナタウンを築いて、強大なネットワークを活用して世界の覇権を目指す日が遠くない近未来に訪れるだろう。超大国アメリカを追い抜いて世界に君臨する日が必ずやってくるだろう。反対する者は投獄して処刑するのみで、党幹部の思惑は事実上神仏の啓示となって国民を付き従わせるだろう。

 政治経験が乏しい小粒な世界の指導者で、一体誰がその時阻止できるだろうか。陸・海・空のすべてを掌握されて、世界は無為にただ沈黙するのみになろう。古くチンギス・ハーンが夢見た世界制覇は、遙かな時を隔てて実現される可能性が高い。一切の主義・主張はその前に言葉を失い、正義を失ってひれ伏すだろう。

 中国の現指導者習近平は多くを語らない。なれどその腹の中には壮大な「中華帝国」への夢が秘められている。多くを語らずとも着々と布石を打つ囲碁の技法にも似て、中国4千年の歴史が胎動している。東アジアの国々は一蹴され、世界が沈黙する日が遠くはない。屁理屈だけに長けた"頭でっかち"の我が国は、その時誰が最前線に立つのだろうか。