獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

秋の名残

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 降り続いた雨が止み久しぶりの青空が広がっている。雨に煙っていた間はよく見えなかった木々の彩りが、目に沁みるほど鮮やかに姿を現した。一口に紅葉と言っても、楓などの鮮烈な赤もあれば、銀杏のような鮮やかな黄色もある。自宅の目の前に拡がる小さな森は、天然の雑木林なので種々雑多な樹木が混在する。

 全体的なトーンは黄色味を帯びた緑という、絵の具にはない色だ。自然の産物は特に植物の世界にそれぞれ独自の色を与えている。野菜の茄子や果物の柿など、絵を描く方がさぞ苦労しそうな特有の色彩だ。衣料品にも古来の藍染めや柿渋など、人工色とは異なる色合いを持つものが少なくない。

 自然界の色彩変化は何もしなくても日々更新されて、同じように見えても昨日と今日では微妙に違う。寒気が南下するこの季節は、役目を終えた草花や木々の葉が一斉に退場間際の「第九交響曲」を奏でる。色々な色彩が混ざり合って、それぞれがそれぞれの色で自己主張しながら去って行く。

 雨に打たれ、風にいたぶられても、慌てず騒がず身を委ねて、人知れずただ黙々と去って行く。人は生涯を終える時に家族や親しい人たちが見送るが、草花や木々の葉は誰にも見送られずそっと生涯を終える。せめてもの絶唱が色彩のハーモニーだろう。暫し目を閉じて耳を澄ませば、枯葉たちの音にならないハーモニーが微かに聞こえる。

 人も草花や木々の葉も、それぞれの運命と出会いながら命を輝かせ、そして終える。後に残るのは消え失せた青春の残照と、燃え残った人々の想いだけだ。秋の終わりはそれらの残り火が、か細い煙と共にどこへともなく消えてゆく季節の絶唱だ。