獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

ラグビー終わって夜は更ける

 ラグビーのワールドカップが過熱した。お世辞にもメジャーとは言い難いスポーツだったラグビーが、ワールドカップが蓋を開けると日本代表が連戦連勝した。並み居る強豪国チームを次々撃破したのだから、世の中は何が起こるか分からないものである。

 前回2015年のワールドカップで、日本代表チームは優勝候補と前評判が高かった南アフリカチームを破る奇跡の金星を挙げた。このニュースは世界中で伝えられたが、お膝元の我が国ではマスコミが騒ぐ割りに盛り上がりに欠けた。事ほど左様にラグビー人気は低いのが実情だった。

 高校ラグビーの奇跡と言われた京都伏見工業高で全国制覇し、その後の同志社大神戸製鋼でも連覇の偉業を成し遂げて、「ミスターラグビー」と尊称された(故)平尾誠二氏の名前は知っていても、ラグビーの伝統やルールを知る人は少なかった。ラクビー関係者は事ある毎に「平尾が居れば…」と口にする。ワールドカップも例外ではない。

 その平尾氏の悲願であったワールドカップの国内開催だから、選手たちが燃えないわけがない。各自が胸に秘めた決意で臨んだゲームだから、連戦連勝は決して偶然の産物ではなかったのである。伝統やルールを知らず"俄ファン"になった多くの人たちは、過熱したマスコミ報道に煽られて"それゆけワッショイ"とばかりに夢中になった。

 我が国ラクビー史上初となる「ベスト8」に進出するに及んで、競技会場ばかりでなく国内全体が異様な雰囲気になった。"若しかしたら優勝するのでは"との期待が高まり、応援風景が様変わりした。サッカー会場へ迷い込んだような幻想さえ抱かせる、訳が判らない過熱ぶりを見せた。そんな雰囲気の中で決勝トーナメント戦は開幕した。

 対戦相手は前回の15年ワールドカップで対戦して勝利した南アフリカチームである。否応なしに盛り上がる「ベスト8」の初戦だった。試合開始直後からスピードとパワーで圧倒された我が国代表チームは、結果として1トライも挙げられず敗れた。敗因を色々な角度で分析する関係者やマスコミが多いが、どう弁明しようと負けは負けである。

 マスコミや国民の過剰な期待を背負わされることになった選手たちは気の毒であった。ノーサイドとなってあれこれ言うのは見苦しいし、聞き苦しい。良きにつけ悪しきにつけ「祭り」は終わったのだ。我が代表チームは敗れ去ったが、強豪国が激突するワールドカップ戦は佳境に入る。何がラグビーの醍醐味で、何がラグビーの真骨頂なのかを知る絶好のチャンスである。

 ラグビーが持つ伝統の一つが「品位」だ。勝敗のみにこだわらず、相手に敬意を示して賞賛するその伝統をこそ是非遺したい。更けていく夜はすぐに明るく明けるのだ。明けない夜は決してないことに思いを致そう。戦った選手たちに拍手だ!!!