獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

遅ればせながらカルロス・ゴーン

 元日産自動車の会長だったフランス国籍のメキシコ人カルロス・ゴーンが、年末・年始のどさくさに紛れて保釈中に禁じられている国外へ逃亡した。取り立てて目新しいニュースに事欠いていたマスコミは"狂喜乱舞"して大騒ぎである。「事実は小説よりも奇なり」を地でいった堂々たる"役者"振りで、ハリウッドの名優たちも形無しである。

 それにしても法事国家を自認する我が国の刑事行政は一体どうなっているのであろうか。これほど大胆不敵な逃亡劇を見せつけられて、手出しを出来ずに放任するのみである。日頃軽微な交通違反でも厳しく取り締まるのに、これほどの大罪になると押し黙る以外方策がないらしい。世の中の常識ではそれを「弱い者いじめ」と言うのをお忘れか。

 長く先進文化国家のフランスで暮らして、自動車メーカーのルノー重役に登り詰めて鳴り物入りで経営不振の日産へ乗り込んできた。余程"大胆不敵"がお好きだと見えて、各種の重荷で身動きがとれなくなっていた日産を大鉈を振るって改革した。「奇跡の復活劇」と世界で絶賛されて一躍"時の人"になった。

 それでもやはり民族性からは逃れられないようで、メキシコ人の血が"天衣無縫"へと招くのか法制度を尊重する先進国文化には馴染まないらしい。法外な報酬を要求して恥じないばかりか、"欲の上に欲を重ねる"愚行を"やり放題"である。露わになったこの人物の素行はマフィアの親分ですら真似できまい。

 効率と利益がすべての現代資本主義社会は、市場原理という名の冷徹な結果のみを追求する。時として人間性を無視した身勝手なルールやマナーを生み出す。まるで「カネの奴隷の如く」振る舞うことを賛美して止まない。究極は自己の利益で、それを得るためには如何なる無法も厭わなくなる。

 現代社会の醜悪さを身をもって示し続けるカルロス・ゴーンにも、皮肉なことに法制度の人権は保障される。法制度が平等にこの人物にも適用されるのである。裁判の場では名だたる弁護人がこの人物を擁護して憚らないだろう。国民感情市民感情では到底許せない重罪人でも、世界の国々は手厚く守るのである。

 想像を絶する巨額の保釈金を没収されても、なお余りある豊富な蓄財であらん限りの悪態をつくだろう。メキシコ人は無法者という役回りが決まっていた昔の西部劇映画を思い出すが、一目でメキシコ人と分かる彼の風貌に片鱗たりとも正義はあったのだろうか。世界がこぞって英雄視した人物の"化けの皮"は、何とも哀れである。