獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

雪が降る

 東京が久しぶりの雪になった。と言っても私が住む多摩地区は内陸で、周囲には低い山が連なる。海沿いの都心とは少し離れているので、例年降雪があると都心より降り積もる。大学入試のセンター試験は何故か雪になる確率が高く、気象庁の発表を待たずとも雪の対策が必要だ。世界一の大都会東京は滅法雪に弱い。

 「雪の降る街を…」と歌ったのはシャンソン高英男で、「雪が降る。貴方は来ない…」はフランスのシャンソン歌手アダモである。「東京で見る雪はこれが最後…」は元"かぐや姫"の伊勢正三の名曲で、イルカが歌ってスタンダードになった。他に「津軽海峡冬景色」や「北の宿から」などの歌謡曲も数多い。

 東京の雪は不思議にロマンチックな響きがある。交通機関が大混乱し、生活に様々な影響を与えるネガティブな側面が強いのだが、詩を書く人の心にはしっとりとした情感を醸し出すようだ。雪国に暮らす人とは全く別の詩情で、日本人らしい細やかな哀感を謳い上げる。人間の醜さを白い雪が覆い尽くして、恋しい人の面影や失恋の悲しみがより一層際立つ。

 人の心は時に不可解に動くが、降っても儚く消えていく白い雪にひととき想いを巡らすのも悪くない。過ぎ去った遠い記憶を呼び戻して、逢えなくなった人の思い出に浸るのも良いだろう。冷たく非情な雪であっても、見る人の心で様々に千変万化する。日常の暮らしは色々あっても、降る雪には罪がない。ただ理由もなく白いだけである。