獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

政治とマスコミの不可思議

 秋だというのにまだ夏が終わらない。街を歩く人たちの姿は夏と秋が同居している。律儀に秋の服装に替わった中高生やビジネスマンは、汗を拭いながらの10月のスタートだ。気まぐれな陽気は何も気象ばかりではない。気まぐれな安倍政権の消費税値上げも、多くの国民の期待とは裏腹に今度は正夢になった。世の中には不可解なことが相次ぐ様相だ。

 何かことが起きて喜ぶのは相変わらずマスコミばかりで、その旗手とも言うべき新聞は今回の消費税値上げの対象外である。表向きでは散々政権批判の論陣を張りながら、その裏ではチャッカリ旨い汁を吸っているのである。そんなマスメディアの新聞を購読料を支払って読む読者がいるのだから、落語のオチ以上に笑える。

 世の中の何が信用できるかと言えば、その逆の信用できない方の筆頭が大抵政治と相場が決まっている。信用できる方よりも何故か信用できない方に話の種が尽きないのだから、世の中は誠に面白く出来ている。つい先頃内閣改造で顔ぶれを一新した安倍政権は、訳が判らない"有象無象"の大臣を尻目に小泉進次郎環境大臣だけが連日マスコミを賑わしている。

 大臣になる前から不思議に小泉進次郎議員は異常に人気が高かった。政治家としての実績はゼロなのに、テレビや新聞は競うように小泉進次郎を追いかけた。政局が動いたり、少しでも変化の兆しが見られる場面では、必ずと言って良いほどコメンテーターとして小泉進次郎が登場する。党三役の実績はないが、事実上はその経験者や現職大臣以上の扱いである。

 マスコミがこぞってそんな異例の扱いをするのは、国民に人気があるからというそれだけの理由である。公共放送NHKがバラエティー番組をお笑い芸人に委ねているのと多分同異義語であろうと思う。とにかく人気がありさえすれば"鰯の頭"でも何でも良いらしい。そんなマスコミが主導するこの時代だから、「本当は知識がない知識人」や「政治を知らない政治家」が出現してもちっとも不思議ではないようだ。

 初入閣からまだ日が浅いにも関わらず、小泉進次郎環境大臣を巡るマスコミ報道は一転してバッシングに転じたようだ。自分達が勝手にでっち上げた虚像を、今度は薄いメッキを剥がすように批判に転じた。元々政治家としての中身も実績もゼロの"ど素人"を、勝手に「次期総理候補」に仕立てて置いて、今度は一斉に"揚げ足取り"らしい。「無責任」がまかり通るのは、何もお天気や消費税ばかりではないようだ。

 マスコミが時の勢いででっち上げた虚像は小泉進次郎ばかりではない。その父親である小泉純一郎元総理もその一人だ。国連決議なしにアメリカが始めたイラク戦争に、世界に先駆けて賛成したのは周知の事実だ。労働者派遣法を制定して大企業の史上空前の利益を生むために、日本人が日本人の"首を絞める"派遣制度を導入したのは何方か。銀行業界の意を受けて「郵政民営化」を断行したのはどこの何方かを、この国のマスコミはお忘れらしい。

 未だ迷走を続ける"郵政"という巨船から、国民はどんな利益を享受できたか。労働者派遣法同様に事実をひた隠しにして、"嘘と偽りの制度"を実現した「大ペテン師」が、こともあろうに今度は「反原発のスター」だという。その"スター様の息子"だから、「小泉進次郎は紛れもない血統書付きの大スター」との扱いである。安倍政権が異例の若さで初入閣させた理由も、国民に不人気の消費税値上げを目前にしての「人気取り」が明白だ。

 この国は誠に不可解な国である。国民に人気がありさえすれば、例え芸ができない芸人でも、政治が出来ない政治家でも良いらしい。軽薄派の国民に迎合して、国民が喜ぶように振る舞っていれば、それだけで無名の芸人も素人の政治家も"一流"になれるらしい。この時代に"額に汗して働く"なんぞは流行らなくて、物事を茶化したり他人を騙すことに長けている人間が「主流派」であるらしい。

 不本意にも長生きしてしまった高齢者は幸せなのだろうかと、日夜思い悩む日々である。