獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

ドングリレースの自民党総裁選

 突然がお得意の安倍総理が又々突然辞任を表明して、予期していなかった与党自民党は大慌ての様相だ。寸足らずのドングリ議員が一躍総理・総裁候補に格上げされて、マスコミの派手なインタビューに次々登場している。昨日と今日の違いがまるで天地をひっくり返したが如き様相で、外野席から遠目に眺めていると誠に奇妙な光景である。

 再び増加に転じたコロナウイルス感染で薄暗く淀んでいた我が国の空気が、突然降って湧いたような話に浮かれ気味だ。何がどう社会に寄与したり、貢献するのかは相変わらず"訳が分からぬ"が、少なくても永田町界隈だけは奇妙に活気づいている。所詮"戯れ言"の政治劇だから、国民生活に影響することはまずあるまいと思う。

 それでも永田町に関係する諸公・諸君たちにとっては、対岸の火事ではなく火中の栗になり得るかどうかの瀬戸際だろう。この時ばかりは普段何らの存在感もないクラゲ議員でも、プカプカ浮いているだけでは己の生死に直接影響するのである。少しでも有利な条件を求めて右往左往し、欲得剥き出しの派閥抗争に参加する。

 安倍総理の登場以来「安倍一強」が取り沙汰されて、足元の与党自民党は風になびく稲穂のように「大臣」の椅子と利権を求めて、安倍総理が所属する右派「清和会」へと雪崩現象が起きた。マスコミは細田派と呼称するが、現在岸田派と呼ばれている左派「宏池会」と並び称される主力派閥である。吉田茂池田勇人大平正芳などの歴代総理を輩出して隆盛を誇った左派「宏池会」が分裂を繰り返して衰退化したのと対照的に、右派の「清和会」は一枚岩を誇示してきた。

 福田赳夫の後継者とされた安倍晋太郎が病死して、その後を継いだ森喜朗が醜態に終始して世間の顰蹙を買い党勢を落としたが、小泉純一郎が登場して急激に党勢を回復した。その小泉ブームに引き上げられて登場したのが安倍晋三現総理である。"小泉人気"を引き継いで「極右体質」をカモフラージュした独自の政治手法を編み出した。師の小泉すら驚く強引な手法は、足元の与党自民党が「総主流派化」したのに助長されて公然となった。

 名実ともに「寄らば大樹」となった安倍総理に対抗できるライバルは存在せず、年齢的にも「終身永久政権」を彷彿とさせるに十分だった。盟友ロシアのプーチン政権を凌駕する趣すら感じさせていたのである。アメリカのトランプ政権が登場して世界の指導者の小粒化が主流になる中で、安倍総理はドイツのメルケル首相と共にその存在感を誇った。

 国内ばかりでなく、国際的にも通用する政治指導者が我が国には存在しない。改めて指摘するまでもなく、与党・野党を問わず目につくのは生気を失って枯れたドングリばかりである。とうの昔に賞味期限が過ぎて、煮ても焼いても食えぬ廃棄食品の見本市の様相である。有力で有能な指導者の下には才気溢れる次世代指導者が育つのが、我が国保守政治の常道であった。それゆえに多少の生臭さを黙過してきたのである。

 現在の自民党は文字通りの「安倍一強」で、与党国会議員の誰もが己の保身と役得を求めて形振り構わず右派「清和会」へなびいている。所属議員数で他派を圧倒するこの派閥がどう動くかで我が国の政治は命運が決まる。安倍政権の生みの親であり、長期政権を一貫して官房長官として支え続けた菅義偉がその気になれば、並み居る候補者の石破茂岸田文雄は吹っ飛ぶ。

 長くそのバカさ加減を披露し続けてきた石破茂岸田文雄には、与党自民党内にも嫌悪感がある。それぞれ本人だけが気づいていない「無能力」を世間は熟知している。若しこの二人のどちらかが総理・総裁になるような雲行きになれば、それを阻止しようとの動きが自民党内から必ずや湧き起こるだろう。賞味期限切れは矢張り通用しないのである。

 まだ正式に総裁選出馬を表明していない菅義偉官房長官に対して、党内の有力派閥が次々早くも支持を表明している。まるで想定内のことだと言わんばかりの様相である。想定内という言葉が出たついでに申し上げるが、自民党の中枢に関わり長く党内外の去就を見続けてきた人間には、マスコミが伝えるニュースとは異なる色々な局面が見えるのである。

 まず賞味期限切れの石破茂岸田文雄について申し上げれば、石破は一言で言うなら政治というものが良く分かっていない。己の主義・主張を述べるだけなら小中学生でも、少し気が利いた子なら出来る。国を動かすに足るパワーとは何かを知らねばならない。歴史は生まれるものではなく、生きている人間が生み出すものだということを認識する必要がある。今更そのことに気づいたとしても、最早時既に遅しの観がある。

 一方の岸田は端的に言って「お人好しの上にバカがつく」存在だ。不勉強ぶりも際立つ。吉田茂の愛弟子だった池田勇人が何ゆえ「宏池会」を旗揚げしたかを学んでいない。何ゆえ我が国保守政治の主流派たり得たかが理解されていない。自民党内左派を代表する主力派閥でありながら見るべき政策提言が成されず、挙げ句の果てが右派の安倍政権にしっぽを振って追従するに到っては、文字通り"開いた口が塞がらない"。

 そればかりか安倍総理のご機嫌を取っていれば、「禅譲」で黙っていても次期政権が転がり込んでくると信じているのだから、最早言うべき言葉がないと断ぜざるを得ない。「宏池会」にはかつて"お人好しの善幸さん"と呼ばれた鈴木善幸が居たが、その鈴木善幸を以てしても岸田文雄の"お馬鹿さんぶり"は傑出している。正直言わして貰うなら、こんな人物が内閣総理大臣になるくらいなら、無作為抽選で広く国民から選ぶべきだとさえ思う。

 河野現防衛相も少なからず意欲をお持ちらしいが、親分の麻生太郎現副総理兼財務相がいち早く菅義偉官房長官支持を表明している中で、これまた"アホバカ"ぶりが際立つ。それぞれの人間性は兎も角として、多少なりと「信頼」の二文字が窺えるとすれば菅義偉官房長官以外に居ない。安倍長期政権の政策的一致性が求められる現下の政治情勢で、賞味期限切れのカビが生えた総裁候補やアホバカ総理候補は不要である。

 まるで水中の蛭の如くに与党自民党に吸い付いて離れない公明党という中身不在の政党もある。クラゲのように漂って目ざとく美味しい利権を求めるだけの総理・総裁候補は迷惑だ。政党助成金という名の巨額の税金を使って、利権に群がるゴマの蠅や現金をばらまく買収劇を演ずるだけのゲスたちが蠢いている。地に落ちた自民党を粛正し、多少なりとも制約が効く集団に変えられるか。

 誰がなっても代わり映えしない自民党総裁選に花を持たせるのは簡単ではない。大勢は既に決して居ると思われるが、この機会に微かな期待を込めて見守りたいと思っている。