獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

ラグビーとサッカー

 スポーツ報道が依然として過熱している。言わずと知れたラグビー人気だ。マイナースポーツからいきなり花形スポーツの仲間入りを果たした感じが強い。世の中はあるべき姿や評価が必ずしもキチンと伝わっていない面が多々ある。今回のラグビー騒動は改めてそのことを顕在化した。

 その主たる原因は相も変わらぬ"根無し草"の如きマスコミだ。風に逆らうことは決してなく、吹く風の勢いに便乗して大騒ぎを演出する。スポーツ界での"マスコミ現象"の典型がプロ野球の巨人だ。「巨人でなければ野球ではない」との風潮が、ごく当たり前のように長く続いて「常識化」した。

 元々が単一民族の伝統が長く、ややもすると大勢に流されやすい我が国の民族性は、ルールを重んじるスポーツ競技においてもその面目が躍如である。みんなが巨人になびけば我も我もとなる。野球でお馴染みだったその方程式が、多少なりと様変わりしたのがJリーグの発足によるサッカーであった。

 Jリーグのサッカーチームも元々は大企業のお抱えであった。母体の企業名を殊更強調せず、地方を拠点とする「地域密着型」路線を採り入れた戦略が成功した。地域の代表チームとしての人気が定着して、サッカーと無縁だったファン層を新たに獲得した。家族ぐるみの応援という新しいスタイルを生み出した。

 高校サッカーや大学チームのレベルまでは良いとして、Jリーグはれっきとしたプロである。世界中に数多く存在するサッカーのプロリーグに比較して、我が国のJリーグは人気先行とのイメージが否めない。辛口に批評すれば、必ずしも実力が伴っていると認め難い選手たちが海外へ渡っている。代表チームの戦績がそれを物語っている。

 我も我もと競って海外チームへ移籍するのは良いが、このまま推移すればやがて日本のサッカー選手が評価されなくなる日が来るように思う。その点でラグビーは見事である。トップリーグの人気は今一でも、代表チームは格以上の実力を示して活躍している。この点がまずサッカーと異なる。サッカーはJリーグ人気が高くても、代表チームの実力は世界からまだ遠い。

 そんな中でのワールドカップ国内開催だっただけに、どの程度観客が集まるか関係者は心配だったろうと思う。いざ開始されると我が国の代表チームが連戦連勝で強豪国チームを次々破った。誰も予想せず、想像すらしなかった結果を実際にやってのけた。親善試合でも途上国チームにさえ苦戦するサッカーチームと違い、ラグビー代表チームは優勝候補のチームさえ撃破した。

 初めて国際級のラグビー試合を見た人が多かったと思うが、実際に試合を見てサッカーとの違いに気づいたろう。同じチーム競技でも、サッカーはゴールを奪って得点した選手が個人的に評価される。何人の選手がそのゴールをサポートしたかは余り問われない。その部分でホームランを打った選手が個人的に評価される野球と似ている。ヒーローを仕立て上げて熱狂を演出するのを得意とする、多くのマスコミが好むパターンだ。

 だがお分かりの通りラグビーは違う。大人のスポーツ、紳士のスポーツと言われ、格闘技の激しさに負けないチームの団結がある。傷つくことを恐れず、自己犠牲の真髄を尽くしながらチームのために戦う。正に男のスポーツの極致と言われる所以である。ゴールやトライの別なく、得点した選手名がクローズアップされることはない。

 スポーツ競技に珍しい「品位」を重んじることでも知られるが、サッカーのように特定のヒーローが生まれることは少ない。その部分で商業主義に馴染みにくいスポーツとも言えるだろう。厳格なルールがあり、決して簡単なスポーツではない。サッカーのように誰でもが参加できて、気軽に親しめる競技ではない。

 そのラグビーが我が国に定着するかどうかは誰も分からない。「熱しやすく冷めやすい」我が国の国民性が、吉と出るか凶と出るかも予測するのは難しい。伝統を重んじるラグビーの大学リーグで、唯一黄色と黒の"タイガー・ジャージー"着用が認められている大学チームがある。それがどこかはすぐに調べられるが、我が国のラグビーが本物になるかどうかは分からない。