獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

新緑と世相

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 我が家の目の前の森が新緑に衣替えした。少し前まで"枯れ木の森"の風情だったが、あれよあれよという間に新緑の輝きになった。毎日目にしてはいるが、注意して見ないと気づかないくらい鮮やかに早い。芽吹きが始まったと思っている間の、一瞬の出来事でもあるように見事な衣替えである。

 所々に混じる山桜が白や薄紅色などの花を咲かせて、それに見とれていたので気づくのが遅れただけかも知れない。それにしても素早い変身に唯々驚嘆する。自然の力の偉大さに改めて脱帽である。忙しく飛び交う色々な鳥さん達が一段と元気さを増して、冬の間は静かだった森が活気づいている。

 人間世界はコロナ・ウイルス騒動でてんやわんやだが、同じ生き物でも木々や鳥さん達とは随分趣が違う。己を過信して憚らない人間社会は、科学技術に溺れてその挙げ句に各種の厄害を誕生させた。留まることを知らずに進歩と発展の夢を追い続けて、結果として自分で自分の首を絞めてはいないか。

 あるがままのリアルに対して、作為のある人工的なフェイク現象が起きている。人間の有り様や社会の出来事などが、人間のエゴと我が儘で勝手に作り替えられ、恐怖や戦慄を巻き起こすばかりか殺人までを誘導する。昔々のことになったチャップリンの喜劇映画の一コマを、現実として見せつけられる時代の皮肉である。

 ひたすら人間社会が追い求めた「豊かで便利な社会」は、巡り巡って人間が人間を恐怖に陥れる社会になろうとしている。否その一部はすでに現実化している。極論するまでもなく、それはひたすら「自滅」へのエスカレーターやエレベーターを生み出していないと、果たしてどれだけの人が確信を持てるだろうか。

 特別便利でなくても、特別早いわけでも遅いわけでもなく、あるがままに自然はそこにある。訪れる季節を拒むことなく受け入れ、自然の摂理通りにリズムを刻んでいる。陽を浴びて輝きを増す森の新緑は目に鮮やかだ。一片の嘘もなく、一切の誤魔化しもない。ひたすらに、ただひたすらにそこにあり続け、輝き続ける。

 春風に揺れる若葉は目に清々しい。心洗われる思いがする。それに引き替え人間社会はやたらに騒がしい。この対比は「真夏の夜の夢」ならぬ夢や希望を見い出し難い「春の珍事」だ。世界が巻き込まれて翻弄されている。新緑に衣替えした目の前の森は、"我関せず"とばかりに日に日に輝きを増しているのと対照的だ。

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