獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

敬語の喪失

 現在嫌でも毎日眼と耳に入ってくるコロナ・ウイルス関連のテレビニュースを見ていて、それを伝えるNHKや民放各社のアナウンサーの言葉に強い違和感を感じている。連日番組のゲストやコメンティーターとして医療の専門家が登場する。それぞれに感染症医学の権威者が出てくるのであるが、対応する男女アナウンサーの言葉に敬語がない。アナウンサーになって精々数年程度の女子アナが、自分と対等に専門家を「さん」づけで呼んでいる。

 気づかずに言っているのか、それとも現代の国語基準に合わせているのかは不明だが、旧世代の日本人にはとても失礼に思えるのである。日本人としての普通の感覚で、診療を受けたりアドバイスを受ける医師を「さん」づけで呼ぶだろうか。私自身長く幾つかの病院のお世話になっているが、病室や外来の診察室で医師を「さん」づけで呼ぶのを見たことがない。

 厳密な検証はともかくとして、善し悪しを超えて「先生」と呼ぶのが世間の常識だろう。専門家の貴重な意見を伺うのに自ら足を運ぶこともなく、空調が整った快適なスタジオに座って、斯界の権威者に向かって「さん」づけで呼ぶアナウンサーとは何者ぞ!!との強い反感を覚える。アナウンサーという職業がそれほどまでに尊大なのかを問わねばならない。向き合う相手に対する尊敬が、微塵も感じられないのが正常なのかと言いたい。

 日本語には「本末転倒」という言葉がある。物事の本質を深く究明するために日々努力している人を「専門家」と呼ぶが、テレビに登場するアナウンサーという職業の人たちにはその意味が理解されていない。それを「本末転倒」と言わずして、何を「本末転倒」と況んやである。尊敬と失礼を失った日本語は最早日本語ではない。アナウンサーという職業人は襟を正して日本語を学ぶ必要があるようだ。

 敬語がない日本語を話す奇妙な職業人がアナウンサーだ。せめてもう少し他人を尊敬する常識を身につけねば、数多くの場面に登場する「非常識で軽率なお笑い芸人」同様である。その程度のアホ番組を何ゆえ視聴料を払ってまで見せつけられるのか、その良識を問いたい。それとも常識を欠く日本語が「正しい日本語」だと強弁するのだろうか。「敬語なき公共放送」が新しい零和の時代の象徴だとも言いたいのであろうか。