獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

政治家の幸運と不運

 世の中の出来事には常に幸運と不運が付き纏うが、選挙で選ばれる政治家はその能力や実力以上にタイミングが非常に大きく作用する。一口にタイミングと言っても色々あり、選挙に出る際の候補者同士の実力や、選挙が実施される時期の善し悪しまで各種様々だ。中でも傑出しているのが、何もせずとも得られる通称「棚ぼた」の幸運であろう。

 誕生時の星の巡り合わせかどうかは知らぬが、世間には矢鱈に幸運が続く人も居れば、その逆でやること成すことが悉く不運に見舞われる人も居る。誠に人の世は無常である。そんな嘆きを少なからず耳にしながら、「馬耳東風」とばかりに勢いに乗る政治家の筆頭が安倍晋三現総理だろう。

 そのタイミングの良さで比較すれば、東京都の小池百合子知事も負けず劣らずだ。不謹慎な言い方を敢えてすれば、都知事選の年にほどよいタイミングで「新型コロナ・ウイルス」の一大感染が拡がった。人の出入りと移動、人口密度など、他の自治体と格段に差が大きい東京都はいち早く確認されて、小池知事は手際よくその水際作戦の陣頭に立った。

 期せずして連日テレビ画面に登場する「時の人」となった小池百合子都知事と、その余勢に預かった安倍晋三総理とは、嫌でも朝から晩まで国民や都民の目に触れる絶大なアナウンス効果を得ることとなった。選挙が不可欠である政治家にとっては、どれだけ事あるごとに有権者接触する機会を増やすかが命綱なので、このご両者は「値千金」の幸運を手にした。

 今回のコロナ・ウイルス騒動は小池都知事安倍総理のみならず、安倍政権の各閣僚にとっても思わぬ「棚ぼた」であったろう。特に直接担当大臣になった西村経済金融相と加藤厚労相も、小池都知事安倍総理に負けず劣らぬテレビ画面での露出度を得た。「国民の命と財産を守る」とのキャッチコピーに異を唱える国民は居らず、相変わらず"見当違い"の野党すら反対は出来ない。

 かくして壮大な"バラマキ予算"が制度化され、善し悪しを超えた異例の非常時現金支給がスタートすることになった。誰の懐も痛まない"打ち出の小槌"が振られ、この制度を打ち出した安倍政権は格段のイメージアップに浴することと相成った。現安倍政権の閣僚名簿が発表された時に、「滞貨一掃内閣」と皮肉を言われたことを思い返せば「別世界」とも言える"大出世"である。

 各大臣にその処理能力があろうとなかろうと、官僚機構が次々打ち出すコロナ・ウイルス救済策は、有権者である国民にとっては"恵みの雨"を超えた"天の助け"であり、担当大臣は神仏の如き存在にも見える。これほどの分厚い波及効果が得られる政策は他にない。実際はたまたまその席に着いていただけとは申せ、これ以上の幸運は滅多に存在しない。

 天変地異にも等しいコロナ・ウイルス騒動が、並み居る政治家を幸運と不運とに色分けしている。何ら労せずして「幸運」を手にした者と、折悪しくその場に居合わせなかっただけの「不運」に泣く者が誕生した。例えその政治家の功績ではないと知りながらも、救済策を担当したり関与した政治家は「伝家の宝刀」を手にしたようなものだ。

 有権者から見れば抜群のアナウンス効果で、コロナ・ウイルスと無縁の政治家とは格段の違いで受け止められるだろう。経歴にコロナ・ウイルス関連があるだけで、ほぼ当選が確実だと皮肉を言えよう。「災い転じて福と成す」ということわざは、それらの例を指すために用意されたと言っていいほど"嵌まる"のである。

 安倍政権はこれで事実上の「永久政権」になったと言って過言ではないだろう。政府・自公与党の誰が安倍総理に対抗できようか。自民党総裁選の暁には、無投票当選を回避するための"当て馬候補"以外は出る者が居ないだろう。既にその予兆が顕著にあるが、今年予定されている東京都知事選での小池百合子現職知事同様に、事実上対抗馬が居ないだろう。

 世の中で生きるには運のあるなしが大きく作用するが、選挙で有権者の選択を経ねばならない政治家は取り分け重要だ。それらの「幸運」に恵まれた政治家は、ただ単にその権勢におもねることなく、名実ともに「幸運」を施策に活かして欲しいものだ。「チャンスの後ろは禿げ」であることを肝に銘じて、その「幸運」を盤石にして貰いたい。

 「幸運」と縁が薄い有権者・国民は、そう願いながらこのコロナ・ウイルス騒動を見守っている。