獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

台風という非常災害

 台風の季節になった。現在10号が沖縄と九州に来襲中で、異例の早期記者会見を開いた気象庁によると、「経験したことがない規模の猛威」だそうである。私たち人間が自分たちで招いた自然災害とは言え、人智を遙かに超えて襲い来る猛威には為す術がない。未曾有の巨額な損害をもたらしても、誰かが責任を負うわけではなく、国や地元自治体に損失予算として計上されるだけだ。

 非常時に不謹慎だとは思うが、これらの自然災害で巨額の利益を得ている企業や業界がある。非常災害だから誰しもその中身を精査しようとはしないし、仮に個別に項目をチェックしたとしてもその結果で中止にはならない。通常の取引や契約と全く違う「治外法権的」取扱いになる。非常時特有の資材の高騰や人件費の値上がりは織り込み済みで、それに異議を唱える人はまず居ない。

 不謹慎の上塗りでいえば、これほどの「ボロ儲け」は滅多にない。請求先が国や自治体などの公共機関だから、「元請け」から「下請け」「孫請け」と、更には二次・三次の「孫請けの孫請け」まで中間搾取の取り放題である。業界団体や大手企業が名を連ねることが多い「元請け」は、事実上ペーパーカンパニーのように手を汚すことなく利益だけを"せしめる"美味しさを貪る。工事を発注する国や自治体も、大手が取り仕切るならと安心して疑うことをしない。

 何も災害時に限った話ではないが、我が国の商取引の多くは各種の業界が複雑に絡み合って、それぞれが利益にありつく構造になっている。誰も表立って「災害待望論」を口にはしないが、例を挙げればインフルインザの流行規模の大小でバカンスが熱海温泉からハワイに変わる開業医にも通じる。自然災害が必ずしも自然災害ではなく、「天与の幸運」にもなり得るのである。被災して嘆き悲しむ人がいる一方で、想定以上の利益に"ほくそ笑む"人たちもまた居るのである。

 自然と運命はあくまで巡り合わせで、誰かが故意に招いたり演出することは困難だ。だから一切の遠慮・会釈なく利益という名の果実にありつける。地球上に何の貢献もせず猛威だけを振るうように見えるコロナウイルスだって、ワクチンやマスクなどの防具を担う一部の業界には相当の利益を齎している。一見無表情に見える自然災害も注視すれば、際立つ裏表があるのに気づかされる。

 さて台風10号は誰を笑わせて、誰を悲しませるのだろうか。その行方と"みやげ"が気がかりな終末になった。