獨庵放言録

群れず流されず時代を見つめ続ける老人の、骨太で繊細な風変わりブログ!!!

「嘘つき」と「ホラ吹き」のドックレース

 愈々アメリカ大統領選前日となった。別段期待感があるわけでもなく、何かしらの楽しみがあるわけでもない。敢えて言えば「世界の盟主」を自認する超大国で、太平洋戦争で敗戦国と占領国に分かれたにも関わらず、戦後70年余を経ても相変わらず"主従関係"が解けない同盟国の大統領選だけに無関心では居られないという理由だけだ。

 国民の大半を占める戦後生まれ世代の方々とは、多分異なる感覚で遠くて近い国、近くて遠い国を見ている。外国や他国はそれぞれに存在感が違うが、中でも敗戦と同時に進駐してきたアメリカ軍には一際鮮烈な印象が消え残る。沖縄の米軍基地問題も現地と本土とでは大きく認識が異なるように、単なる一国間関係では看過できない複雑な思いがある。

 長く「世界の盟主」として、或いは使い古された「世界の警察官」として、地球上の人類社会に君臨してきた先進国アメリカが様変わりした。初の黒人大統領となったオバマを最後に、アメリカ社会から「正義」が消えた。言わずと知れたトランプ大統領の登場である。思いつきの「朝令暮改」が日常化し、その場その場で口から出任せの「嘘」が事実や真実に化けてアメリカ社会に蔓延している。

 目先の現実しか見えない"低脳化型国民"の増加は何もアメリカに限った話ではないが、トップ権力者の"低脳ぶり"が際立つ新しい先進国アメリカの誕生である。共産主義国家ではないので、権力者当局の意に沿わない国民が拘束されて投獄される事態には到っていないが、制度疲労して色褪せたセピア民主主義が従来と異なるアメリカ社会を招来した。

 是非は兎も角として現在のアメリカ社会に「自由と平等」の民主主義を見出すのは難しい。目先の生活に追われる豊かな貧困層が増加して、豊かであるのに救済されない国民層の不満が爆発している。人種間の対立が先鋭化する負の側面が目立ち始めても、富裕層に軸足を置く共和党のトランプ政権は気に懸けない。

 二大政党の政策が語られた過去の大統領選と様変わりして、候補者である「嘘つきトランプ」と「老いぼれたホラ吹きバイデン」とが、お互いを口汚く罵り合う大統領選になった。ドックレースに例えたが、そう言っては犬に申し訳ないくらい薄汚い泥仕合だ。超大国アメリカの威信とプライドなどどこにも見当たらない、史上最低の大統領選と言わざるを得ない。

 善し悪しは別として、"それなり"のルールとマナーがあった過去の大統領選には「自由と平等」の盟主としての趣があった。それが"唯我独尊"のエゴイズムに取って代わり、「カネこそが正義」と牙を剥いている。どちらの候補が勝利したにしてもアメリカ社会がハッピーに治まるとは考え難い。新しい「不幸の時代」の幕開けになりそうである。

 多民族社会の坩堝は人種間対立がより先鋭化して、同盟国のことなど構っていられない「アメリカンファースト」イズムに塗り込められるだろう。自国の足元さえ覚束ないので、他国のことなどどうでもいいだろう。「日米同盟」を10年一昔とばかりに信奉する寝惚けた同盟国に住む国民は、何をどう考えどう生きるべきだろうか。

 どうあれ「嘘つき」と「ホラ吹き」が相争うアメリカ大統領選は間もなく決着する。